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極夜@写しの本 (プロフ) [2016年12月6日 14時] 4番目の返信 [違反報告]【偶然という言葉は存在しない。あるのは必然、ただそれのみである】
「だってよ、ドラン」
「へぇ~~~~」
「うわ、気のね~返事! お疲れかぁ?」
モノクルを外し、傍らの少年に笑いかけるのは鳶のケモノビト。齢はそろそろ100を超し、少年とは随分離れている。
「べぇつにぃ」
不機嫌そうに口を尖らせるのは混沌の中の灯火。体のところどころに痣があることから、喧嘩をしたのだと推測できる。
「必然だけ、ねぇ……」
ソラス――その鳶のケモノビト――は小さく首をかしげ、傍らの龍哉――灯火の少年――に問うた。
「何か不満があるのか?」
「当たり前だし」
龍哉は青々とした草木に背を預けると、大きく息を吸い込んだ。
……吹き渡る爽やかな風。
「必然しかないってのは……つまり、俺とヴェルデが出会ったのも決まってたってことだろ?」
「まぁ、そうなるな」
ソラスは小さく目を細めて、竜也の言葉を待つ。……その瞳には、人間を愛する優しさがハッキリと表れていた。
龍哉はソラスの視線には気付かないのか、未だに言葉を探していた。
……ふと、ソラスの顔が悲しげに歪む。瞳に現れる色は、深い深い緑色。瞬いて空気を揺らす。
「……俺、お前と会えたのは奇蹟なんだって、信じてる。決まってたことじゃなくて、ただ、互いに互いを探していたから出会えたんだって……そーいう風に」
龍哉は目を閉じて、言葉を選ぶ。真っ直ぐで、愚直で、でも飾り気がない、綺麗な言葉。何も考えない人々とは全く違う、温かい言葉。
「カミサマだとか、賢者だとか、運命だとか……俺にはどうでもいい。というか、大切なのは事実と未来だと思うんだよな。……それと、お前」
ソラスが面食らったような顔で龍哉の方を見た。……そして笑む。優しく、哀しく……そして儚げに。
「……ありがとよ、ドラン。あ~! 俺は幸せ者だなッ!!!!」
二人の髪が、言葉が、そして優しさが……温かな風に揺られて騒めいた。太陽も静かに笑っているようで、二人の周りだけはただただ平和だった。憎しみも上下関係もなく、二人を繋ぐのは友情だけ。
とある過去の1ページである。