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眞城 (プロフ) [2019年2月21日 17時] [固定リンク] PCから [違反報告]

もう何度目だろうか。
煩わしいアラームを覚束ない手つきで止める。
今日は日曜日、あと少しぐらい眠っていても許される筈…… そう思ったが、あまり寝ていれば不機嫌な同居人が優しいとは言い難いやり方で自分を起こしにかかるだろう。
未だに気怠い体を起き上がらせ、ベッドに腰かける。そういえば彼奴は帰ってきてるだろうか。
バーテンダーである彼はいつも朝方に帰ってくる。自分は大抵寝ている時間帯である。
ふらりと立ち上がり、冷たいフローリングの上を歩いてリビングに向かう。

「ふぁ…いお、いる?」

返事はない。
寝惚け眼のまま彼を探すと、ソファにスーツのまま寝ている彼の姿があった。

眞城 (プロフ) [2019年2月21日 17時] 1番目の返信 PCから [違反報告]

ゆらりと意識が覚醒していくのが分かる。茹だる頭に同居人の声が響く。
今日は確か…日曜。そうか、今日は仕事は無いのだな、、と考えながらこの事態の収拾をどうするかに、うまく働かない頭で必死に考えた。
呼びかけられたことに返事をしない俺を不審に思ったのか涼はぺたぺたと裸足で近づいてくる。
頭痛がひどい。関節が痛む。悪寒がする。…どれも風邪の症状であった。
そんな場合では無いが伊織は原因に考えを巡らせた。
昨日は土砂降りの雨、勿論天気予報をチェックしていた俺は傘を持って行った。念のために折り畳み傘もだ。準備万端だったのにも関わらず、コンビニで傘は盗まれ、折り畳み傘は強風に流され彼方へと旅立った。結果、伊織は土砂降りの中、特に身を庇うものも無く、濡れに濡れながら仕事場であるバーから帰ってきたのだった。
俺は運がとことん悪い。つくづくそう思ったが家に辿りつけただけでも御の字だ。着替えてから風呂を沸かし、そこからの記憶が途切れている。
ついに俺の間際で止まった裸足の足音にうっすらと目を開けた。


「あぁ…はよ、りょう、」

明らかにいつもと違う自分の声に、涼は若干眉を顰めた。怪訝そうな表情に、これはばれたな、と他人事のように思う。だがもう自分にはどうすることもできず、ただ涼を見上げていた。

眞城 (プロフ) [2019年2月21日 17時] 2番目の返信 PCから [違反報告]

漸く目を開けた伊織の状態に異変を感じ取る。頬は紅潮し、薄らと汗をかいているように見える。そして潤んだ鳶色の瞳。
確か昨日は大雨、伊織は濡れて帰って来たのか。しっかり者の彼からは考えられない。傘はしっかり持って行った筈である。
「伊織?大丈夫か?」
大丈夫である筈はない。見るからに体調は悪そうなのに当たり前のことが口を衝いて出る自分に少し苛立つ。熱はあるだろうか、病院には連れて行くべきか、まずは熱を測るのが先か着替えさせるのが先か…
どうにも看病の経験がない涼には難しい状況だった。かといって頼れる知人もおらず、途方に暮れかけるが打開できるのは自分だけである。
思い切って伊織の膝の裏とうなじに腕を差し込み、そのまま抱き上げた。

眞城 (プロフ) [2019年2月21日 18時] 3番目の返信 PCから [違反報告]

いきなり体が宙に浮いた。熱が上がったのかと思った。再び重い瞼を開けると、至近距離に涼の顔があった。いつもなら頬にキスでもかましてやるところだが、今日に至っては最早驚いて口をだらしなく開けるのみだった。
振れあっている肌の部分だけが暖かい。もう少しだけ温まらせてもらっても怒らないだろうか、少々体を捩って涼の方に擦り寄る。優しく自分を抱き上げてくれている腕に少しだけ力が入ったのが分かる。
「…涼、ごめん」
喉から出たのは掠れた声だけであったが、彼にはちゃんと聞こえただろうか、少しだけすっきりとした頭で考えながら近くにある涼の横顔を見詰めた。そういえば涼の今日の予定はどうだっただろう。バイトは入っていただろうか。自分が迷惑をかける訳にはいかない。講義は無いだろうが自分のせいでバイトは休ませる訳にはいかない。

眞城 (プロフ) [2019年2月21日 18時] 4番目の返信 PCから [違反報告]

いつも気丈に振る舞う彼からは考えられない弱気な言葉だった。
これはかなりきてるな。
とりあえず寝室まで運び、ベッドに優しく下ろす。
まずは着替えさせた方がいいのか、やっぱり。伊織は細めた瞳で此方を見上げている。こうなったらとことん看病しなければ。
俺は一言断って自分のクローゼットに向かい、適当に服を引っ張り出す。そしてベッドの脇にそれらを置いた。
「まずは着替えた方がいいだろ、これでいいか?」
力なく横たわっている伊織が僅かに首を傾けた。

眞城 (プロフ) [2019年2月21日 23時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

とりあえずは自分も着替えた方がいいものだと思っていたので涼が着替えを持ってきてくれて助かった。一度横になった体を起こすのはなかなか大変だったが横で涼が支えてくれ、なんとかスムーズに起きあがることができた。
のろのろと着替えていると、まだパジャマのままだった涼も着替えていた。少し涼の香りに包まれて安心する。涼が着替え終わった後も俺は着替えている途中だったので、少し気遣う様子を見せながらも、軽く朝食をとることにしたようだった。
…にしても…
「涼…これでかい…」
自分よりは少し体格が勝っている涼の服を着ると、必然的に袖や裾が余るのであった。

眞城 (プロフ) [2019年2月21日 23時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

パンを少しだけかじって朝食を済ませた俺は寝室に戻った。漸く伊織は着替えを終えたようで、少し不満げにベッドから俺を見上げた。サイズの違いを訴える彼の頭に軽く掌を載せ、さらりと撫でる。
「悪かったって、日曜だけど開いてる病院あるみたいだから病院行こう」
ぽんぽんとそのまま掌で頭を軽く叩いた。しまった、少し頭に響いたりしただろうか。しかし、起き抜けの時よりも少しは楽そうな伊織の様子を見て少しだけ安堵する。
上着を着て待っているようにと伝え、自分はリビングに戻り支度を始めた。

眞城 (プロフ) [2019年2月21日 23時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

すぐに頭から離れていった彼の温もりに少し淋しさを感じながら、朝よりはましになった体調に少し安心する。
涼に渡された上着の袖に腕を通して涼の準備を待つ。
暫くして準備が終わったようで、彼の後ろについて玄関に出る。
エレベーターを出ると風に首を竦める。少し悪寒が戻ってきたような気がするが気のせいということにして車まで歩く。車に乗ると涼がすぐに暖房を全開にしてくれた。
「病院ってどこの?」
他愛無い質問を投げかけると彼は少しだけ此方に目を向けて口だけで笑い、割と近場にある小さな病院の名前を口にした。遠い場所まで連れて行かないように配慮して一生懸命その病院を探してくれたのだろうか。
細かいことを考えながら車窓から外を見ていると、車は病院の駐車場に停まった。

眞城 (プロフ) [2019年2月22日 15時] 8番目の返信 PCから [違反報告]

まだ少しだけ辛そうな伊織の傍を歩きながら病院のフロントに向かう。
受付を済ませると待ち時間は15分程だそうだ。隅の方のソファに並んで座り、少しだけ伊織の顔を覗き込む。未だ顔は紅い。日曜だからなのか少し病院は混んでおり、受付も忙しそうにしている。
俺が覗き込んだのを不審に思ったのか少しだけ眉を下げてこちらを見返す伊織の髪を軽く撫でる。
「15分あるからゆっくりしてな」
何しろ俺は家事ができない訳ではないのだが器用にこなす伊織に甘え、ほとんどを任せっきりにしてしまっていたのだ。働きすぎというのも考えられる。基本的に仕事が夜の彼は昼は寝ているが、帰ってきてからは朝食の準備も済ませておいてくれるし朝にはきちんと俺を見送ってくれてから就寝するのだ。

眞城 (プロフ) [2019年2月22日 16時] 9番目の返信 PCから [違反報告]

軽く頭に載せられた暖かい掌に目を細める。ゆっくりか。熱があれば甘えても許されるだろうか。許す許さないの問題じゃないと言われそうだが普段どろどろに甘えることはしない自分にとっては難しい問題だったのだ。
熱のせいだとあとで言えばいいと思い、思い切ってことりと涼の肩に頭を置いてみた。案の定顔に熱が集まるのを感じる。肩に掛かっていた上着を掛けなおしてくれた。
「ありがと」
こんな時でも気の利いたことが言えないの俺なのである。いい大人が涼に凭れて子どものようにしていてもいいのだろうか、という煩悶が首をもたげそうになるがなんとかそれは飲み込んでおくことにする。

眞城 (プロフ) [2019年2月22日 16時] 10番目の返信 PCから [違反報告]
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