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Littorio (プロフ) [2018年9月22日 21時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

息が詰まるような思いに襲われて、幸葵は絶句した。征花の自己肯定感が低いのは家庭内の事情が関係しているのだろう、と当たりはつけていた。
秀才ゆえの劣等感であろうとは思っていた。けれど、これは、ものが違いすぎる。
「っ」
扉を衝動的に開けて、征花の傍に跪く。それなら、と悲哀が多分にこもった声を溢し、征花の目を見つめた。
「そんな家になんか、帰らなくて良いじゃないですか……! それなら、それなら、俺の家とは言わない、せめて誰か、他の優しい人のところへ、行きなさい! 知らないなら、俺の両親の家でも、良いから……!」

666 (プロフ) [2018年9月22日 21時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

「駄目です、駄目なんです。」
それは甘えだ、と征花は首を横に振る。
甘えを許されない、即ち逃げることも許されない。逃げたいのに逃げられない。逃げたら、どうなることか、わかったものではない。兄達のところに逃げたら迷惑がかかるし、直ぐにわかってしまうだろう。
「……結局僕は、誰にも頼れません。誰にも甘えられない。それが僕です。僕なんですよ。」
悲痛そうな自嘲するような笑顔を浮かべて征花は言う。嫌悪抜きに初めて顕にした表情だ

Littorio (プロフ) [2018年9月22日 21時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

「……逃げでないなら、良いんですか」
呟いて、幸葵は自分の左手首を強く掴む。包帯に血が滲み、痛みが脳を酷く侵したがそれをストッパーにして、幸葵は口を開いた。
「頼ると言うことでなければ、甘えると言うことでなければ、それは弱いと言うことにはならないんですか。それなら、それなら俺が君を拐います。監禁してしまいます。してしましましょう。それなら君は甘えたことにはならない、頼ったことにはならない。頼らなくても良い。……ねぇ、だから、今だけでも、今だけで良いから……囚われてください。俺に、俺の手に、囚われて、ください……!」
けれど手は伸ばさないで、幸葵は言い切った。苦しいのか、痛いのか、はたまたなにか違うものか。泣きながら。

666 (プロフ) [2018年9月22日 21時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

「っ、先生、血が…」
驚愕するような表情をして、征花は幸葵の左手首に手を伸ばす。しかし伸ばしかけた手を止めて、僅かに俯いた
「……確かに、それなら、甘えにはならないです。頼ることにもならないとは、思います。だけど、僕は貴方には依存しませんよ。……少なくとも、自制が効くうちは。貴方と食い違うようなことも起きますよ、絶対に。」
それでいいんですか、と幸葵の左手首を今度こそ掴み、征花は問う

Littorio (プロフ) [2018年9月22日 21時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

「良いんですよ……最初から、俺は、分かってた。君が俺の手に入らないなんて、分かってた」
それでもいいと思っていたんです、そのはずなんです、と幸葵は無理矢理笑おうとする。征花に捕まれた左手首はもう血に濡れていて、包帯越しにもその鉄臭さが、生温さが分かるほどになっていた。
むしろ依存なんかしないでください、と幸葵は掠れた声で乞うた。俺は共依存なんてしたくない、これ以上壊れたくないんです、と。
「食い違って、構いません。俺は受け入れられるような中身じゃない。そんなの、とっくの昔に知ってるんです。それでも暴走しました、が……薬は、明日には届きます。教職も、とりあえずは休みます。……だから、いいんです。いいんです……」

666 (プロフ) [2018年9月22日 21時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

「……なら」
征花は悲痛そうな笑顔を浮かべたまま言葉を紡いでいく。
「……僕は、貴方に囚われましょう。貴方の手に、囚われます。だから」
助けてください、とこれまでにない程の悲痛な声で、本当に助けを乞うような声で征花は言った

Littorio (プロフ) [2018年9月22日 21時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

無言のまま頷き、幸葵は自分の左手首をつかんだ征花のその手を、優しくだが右手で包み込んだ。
そして一度手を解かさせ、征花の体を姫抱きで抱え上げる。
「俺は、君を捕らえます。俺に、この家に、縛り付けます。……その代わりに、君を、救いましょう。それが叶わなくても、守ります」
ここにいる限り、と誓うように呟けば立ち上がり、荷物を器用に拾い上げれば征花をリビングへと連れていく。

666 (プロフ) [2018年9月22日 21時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

「すい、ません…」
ありがとう、ございます、と嗚咽混じりの声で征花は言葉を紡いだ。涙も流れているのだが、征花は自覚していないのか涙を拭うようなことは一切していない

Littorio (プロフ) [2018年9月22日 21時] 8番目の返信 スマホ [違反報告]

「どう、いたしまして」
ゆっくり深呼吸をすれば征花を先程自分が座っていたソファに下ろし、その正面に膝をついて目を合わせる。
「……触っても良いですか?」
泣いている征花にそう尋ね、幸葵は僅かに眉を下げる。痛みがある分思考はマトモな方によっている。そのため、わざわざ尋ねたのだ。

666 (プロフ) [2018年9月23日 8時] 9番目の返信 スマホ [違反報告]

「……は、い…」
震える声で征花は肯定の返事をし、頷く。幸葵がまともな思考に寄っていると察した上での返答である。

Littorio (プロフ) [2018年9月23日 8時] 10番目の返信 スマホ [違反報告]
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