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Littorio (プロフ) [2018年7月20日 7時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

「こんにちは」
慈恩は書き上がった原稿の束を封筒に入れて携え、編集社に訪れていた。新作が書き上がったため、それを持ってきたのだった。
話を通せば自分の担当と顔を会わせ、前々から話していた作品が出来上がったと伝える。そしてまとまった原稿用紙を差し出し、これを上に出してまた修正要望を出してください、と微笑んだ。
担当は一度他の編集員と話すらしく、慈恩は一度ロビーに出る。そこで、同じく時間を潰すつもりでロビーに出てきたらしい同業者を見つけた。
「侑斗さん、奇遇ですね」
あなたも原稿を出してきたところですか、と口にして、慈恩はまたほわりと微笑んだ。

666 (プロフ) [2018年7月20日 8時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

「、あぁ、どうも」
声をかけられ少し驚いたような表情をした後、侑斗は僅かに微笑んで挨拶を返す。
自販機で買った珈琲を飲み干し、はぁ、と溜息をつく。いつもならもう少し早く原稿が出せるのだが、どうも体の調子が良くないのか今回はスケジュールが詰まってしまった。少し無理をして原稿を仕上げたせいか、目の下には薄らと隈が浮かんでいる。
「はい。今回は、少し予定が詰まってたので…ボロが出ないか心配です」
眼鏡をかけ直しながら僅かに笑って言った

Littorio (プロフ) [2018年7月20日 8時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

「原稿のボロが出るよりも先に、侑斗さんの体にガタが出そうですよ」
ちゃんと寝ないと私たちの年齢は体をすぐに壊しますからね、と言うと慈恩はクスッと笑う。そして、侑斗の隣に並ぶと自販機で紅茶を購入した。
落ちてきた缶を手に取り、蓋を開けると口をつける。ほう、と息を吐き出せば、ゆっくりと口を開いた。
「侑斗さんの話は面白いですから、もし読めなくなったら寂しいですよ。体には、気を付けてください」

666 (プロフ) [2018年7月20日 9時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

「そう言ってもらえるのは、小説家としては、嬉しい限りですね」
少しだけ笑って言う。しかし、年齢の事を踏まえても、ここ3日どうも体の調子が良くない。……その後に懸念される、侑斗の最も恐れていて、しかし制御が効かない行動が脳内を過ぎり、溜息をついた。家に帰る前、人がいない時ならまだ問題は無いのだが、と考えつつ出来るだけ制御しようと考えると、眉間に皺が寄る。侑斗の悪い癖だ
「まぁ…寄る年波には勝てませんからねぇ。昔のような無理は、控えますか…」

Littorio (プロフ) [2018年7月20日 9時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

「無理は控える。それがいいでしょう……私も最近は、徹夜なんかできませんからねぇ……」
ところで眉間に皺が寄って怖い顔になってますよ、と言って慈恩は首を傾げた。元々あまり人相がよいとは言えない侑斗であるが、ここまでとなると式神たちが騒がしくなる。
まあ表情だって個性ですけどね、と言う言葉で纏めてしまえば、また慈恩は笑う。

666 (プロフ) [2018年7月20日 9時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

「っ、あぁ、すみません」
考え事をしてる時の癖で、と苦笑して言う。あながち、間違いでもないし嘘でもない。但し、どんな考え事の時でも眉間に皺が寄るわけでもなく。制御不能な自分の性質を考える時、という条件がつく。
年を重ねて、ある程度制御ができるようになっても、自分の奥底に眠る性質には抗えない。だからこそ、気を紛らわせるために、発散するために、小説家という道を選んだのだから。
「………ふう」

Littorio (プロフ) [2018年7月20日 9時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

「まあでも、悩みもあながち悪いものではありませんけどね」
私も若い頃は悩みを抱えるエネルギーを転化して小説を書いていましたから、と口にして、慈恩は空になった紅茶の缶をゴミ箱に投入した。
ほんの少しばかり、自分の昔を思い出してみる。容姿が周りの子供とは少し浮いていて、友人が少なかった慈恩。高校を卒業する前に死んでしまった両親。
「深みのある怖さは素晴らしい。侑斗さんは、それを上手に言語化できている……私はそう思います」

666 (プロフ) [2018年7月20日 9時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

「そうですかねぇ……」
深みのある怖さ、という言葉を考える。侑斗の専門は、ダークファンタジーだ。普通ではありえない現象や、力を題材に暗い世界観で描かれる小説は、人を選ぶが評価はそれなりにいい。……だが、その暗い世界観は、突拍子もない出来事は、半分が侑斗自身が体験したものなのだ。
正気を失う感覚も知っている、常人なら遭遇しえない状況にも何度も遭遇した。…何より、侑斗は、してはいけないことをしていたのだ。想像だけでは、侑斗のダークファンタジーの世界観は生み出せない。

Littorio (プロフ) [2018年7月20日 9時] 8番目の返信 スマホ [違反報告]

「ま、かくいう私も、それなりに言語化できている自負はあるんですけどね」
からりと笑い、慈恩はそう口にする。
慈恩の専門は怪異、魑魅魍魎が現れる幽鬼もの。一応恋愛ものや推理ものも書けるが、元々書けるのは体験談だけなのだ。
式神たちを使役するようになるまで慈恩はいろいろな無力感を体感したし、恐ろしい怪異にだって遭遇した。目の前で存在そのものを失った誰かを見たこともあるし、祟り神の呪いを受けそうになったこともある。
「けれど中々、実体験がないことは難しいですよねぇ」

666 (プロフ) [2018年7月20日 9時] 9番目の返信 スマホ [違反報告]

「そうですねぇ……実体験があれば、そこを軸に展開できますからね」
目を閉じ僅かに微笑んで、侑斗は言う。
実体験がなければ難しい、その通りだ。だからこそ侑斗はダークファンタジー以外のジャンルを、書こうと思ったことは無い。特に恋愛ものなど、自分には一生書けないと思っている。
結婚だって、身を落ち着けるためというような目的だった。常人の思考と比べると、侑斗はそこから大分外れた位置にいる。当たり前といえば当たり前だが。
「想像力豊かなら、いいんでしょうけどね」
また少し苦笑してそう言った

Littorio (プロフ) [2018年7月20日 9時] 10番目の返信 スマホ [違反報告]
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