表紙のない御伽噺

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【思い出そうか(月影 葵)】

(プロフ) [2017年2月27日 21時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

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『長を殺した』
『なんという親不孝者』
『恐ろしや恐ろしや』
『鬼よりも恐ろしい修羅だ』
『『『『お前を即刻追放し、永遠にもがき苦しむ呪いを授けよう』』』』
_手を伸ばせば肉を裂き
_叫べば全身が煉獄に巻かれる苦痛を
_全てを壊せと囁く呪いを
_手に取った己の全ての幸をその手で砕く絶望を
____貴様の罪は重く、己自身で死ぬことすら許されぬ呪いを与えよう












スッと目が覚めた。脳はいたって冷静なのに、酷く心臓の音が煩かった。ドッドッドッとなる心音は一向に収まる気配がしない。
ツゥ……と冷や汗が首を伝う。
「……久々に見たな」
親殺しの汚名を着せられ牢に捕らわれ。呪いを授けられ追放されたあの日。
花よ蝶よと育てられ、誰からも愛し愛され本に出てくる御伽噺の姫のように全てに祝福され生きていくと思っていたあの時から一変し、裏切り裏切られ恐れ恐れられ憎み憎まれ、文字通りどん底に叩き落とされた。
素足で地べたを歩くことをしなかった足はたちまち石や割れた破片で斬り裂かれ、空腹を知らぬ腹はたった1日で空腹に苦しんだ。
今まで温室の中で育てられた自分がこんな惨めな思いをしているなんて嘘だと思った。夢に違いないと思いながら眠りに落ちては呪いの痛みで目を覚ましていた。
何度も死にたいと思った。でも死ねなかった。死のうと思えば呪いが発動し死ぬどころではなかった。
「死にたくても死ねなくて、誰にも助けを求められなくて、ならいっそのこともう自分のやりたいようにすればいいんじゃないか…って思ったんだっけ」
きっかけはほんの些細な事だった。いつものように呪いに苦しんで苦しんで、ボロボロになって這い蹲った時。自分は誰にも助けを求めれない事を認識した。
ならば、いっそのこと自分勝手に生きればいいじゃないか。
____そこから、ストンと肩の荷が下りたように体も心も軽くなった。
流浪の民と偽って御慈悲として食べ物を貰った。少しの期間だけ働かせて貰った。
道中で出会った魔術師に魔術の使い方を教えて貰った。
気づけば転々と街を旅し、いつの間にか一人でも平気になった。
多分、訪れた街が2桁を超える始めの街で李紅とルナに出会った。
人形奴隷として生きることに疲れた2人があの時の自分に思え、ほっとけなかった。だから助けた。まさか自分の使い魔になるとはその時の私も思っていないだろう。






「確か、その後だったっけ…」











2人が使い魔になって間もない頃だった。
訪れた街で出会った老夫婦にとある学園を勧められた。
【魔術師育成学園】
そこは、魔術師を育成するための言わば魔術師の為の学園だそうだ。
その学園は魔術師であれば年齢性別種族問わず受け入れると言うのだそうだ。
李紅とルナが加わり、安全は場所の衣食住を求めていた自分には好都合の話だった。
そして、私は学園に入学した。



「そこから波乱万丈の学園生活が始まったんだっけ…」
初日から自己紹介で噛んで出会ったばかりの月夜さんに治療されるは、よく時雨さんにからかわれるはアリスさん経由での教師達の喧嘩に危うく巻き込まれそうになるは……学園に来る前まで思ってないくらいに笑ったり泣いたり怒ったり。
____楽しかった
国から追放され絶望し、生きることに必死になっていつしか心から笑うことすら忘れていた自分がこの学園に来てからと言うもの毎日笑っている。魔術について必死に勉強している。まるであの悪夢が夢だったかのように笑っている。
「ほんと、学園にも旧学園組のみなさんにもお世話になりっぱなしだな……」

(プロフ) [2017年2月27日 21時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

気づけば、上級魔術師の称号を手にし新しい魔術を覚えた。
山を散策中に迷子になっていた風狼こと風琴が新しい使い魔になった。
____呪いの信仰が早くなった。
自分が自分である時間が短くなりやがて大事な家族である李紅に刃を向けた。
我に返った時に映ったのは、大量血を流し腕を抑える家族の姿。
怖くなってそのまま学園から逃げ出そうとした。あの時に言われた呪いの言葉を思い出して、怖くてたまらなくなった。このままだと李紅達だけでなく、お世話になった学園のみんなにも刃を向ける。
それが酷く怖かった。
学園から飛び出したまま行き先も考えずフラフラ彷徨って湖へ逃げ込んだ時に月夜さんに呼び止められた。
「何があっても貴方を守るし、貴方を嫌いになりません」
そう言われ、心のそこから温かい気持ちが溢れた気がした。
「貴方は我慢強いですがそれが仇になります。たまには私達に甘えてください」
誰かに言って欲しかった言葉を月夜さんはいとも簡単に言ってしまった。
嬉しかった。
ずっと前にも誰かに言われた気がした。
きっと私が国にいる時。まだ両親と幸せな日々を暮らしている時に言われたのかもしれない。
何処かで求めていた言葉を言ってくれた人が目の前にいる。
それだけで、涙が出そうになった。
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「葵?」
名前を呼ばれ振り向くと李紅が心配そうにこちらを見ていた。
「どうした?まさか呪いが…」
「違うよ。ちょっと懐かしい夢を見ていただけ」
それだけ言うと李紅はそうか…と言った。
「どんな夢みたんだ?」














「始まりと続きみたいな…そんな夢」

【思い出そうか(月影 葵)】《end》

(プロフ) [2017年2月27日 21時] 2番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]
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