「ふぁ、眠い。」ポカポカとした天気に眠くなりながら廊下を歩いていた。あと少しで自分の部屋だが、今日はもう少し歩いて外に出ようかと思っていた。ふと前に見慣れた格好を見つけ声をかけた。「こんにちは~」(専用です。)
窓から入り込む暖かい光。インドアでも外出したくなるほどには気持ちのよいものだ。名無しは資料を抱えながら病院の廊下を歩く。看護師に頼まれたらしい。そこの廊下を曲がって、左手の扉。彼はぶつぶつと呟きながら歩いている。廊下を曲がろうと足の向きを変えたとき、突然、背後から何者かに声をかけられた。それに驚いたようで、手にしていた資料は床に落ちていく。ばらばらばら。名無しは暫く硬直して、くるりと後ろを向いた。「こ、んにちは」
「やっぱり名無しさんですか。お仕事ですか?」床に落ちた資料を拾い上げ名無しの持っている資料とまとめる。いきなり声をかけてしまってすいません。と頭をペコッと下げた。頭についている花がゆらゆらと揺れる。「はい、これで大丈夫ですか?」と手渡しし、いつも大変そうですねぇとにこりと笑いながら言った。
ありがとうと二、三度呟きながら用紙を受け取る。彼女から漂う花の香りが鼻をくすぐった。「...いつも?...君とは初対面じゃないのかな?」名無しは首をかしげて尋ねた。その表情は純粋で、とても冗談を言っているようには見えない。そう、本気なのだ。三歩歩けば物を忘れる鳥のように、彼は物事を覚えることができない。
「いいえ。喜んでくれたら幸いです。」とにこりと笑った。そしてその後彼の言葉を聞き、あぁ、またかと納得する。こちらが名前をつけたのだからそれぐらいは知っていなきゃおかしいだろう。「えっとですね、名無しさんの名前は私がつけたんです。ほら、スグに忘れちゃうから。」とジェスチャーをしながら教えた。もう、慣れたとはいえ病気って大変なのだなぁと改めて痛感する。
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