「はぁーつまんねぇなぁー」することも無くブラブラと街をさまよっていると昔馴染み………いや顔見知りに出会った専用
「おお、輝刃じゃないか!久方振りだなあ!ちゃんと飯は食ってるかい?」月の光に照らされ、純白の毛髪が艶やかに煌めく。相も変わらず細い見た目をしている顔馴染みに、三つ目男は穏やかな笑顔を浮かべ声を掛けた。
「さしぶりだな!蜜!そこそこ食べてるぞ」月明かりが少しロマンチックな雰囲気を出してる中俺と蜜は談笑していた
「関心関心。飯を食うのは良いことだ。なんてったって美味いからな」蜜は傘を持っている側とは逆の手で輝刃の肩をばしばしと叩く。彼の顔には黒いマスクが着用されており、着ているのは白いパーカー、履いているのは黒いジーンズ、肌は白く、髪は黒くと、全体的に黒白でちぐはぐな印象を受ける。蜜はその、清濁併せ呑んだかの様な輝刃の格好をとても愛おしく思っていた。輝刃は人間ではないが、とても人間らしく見えて。
「そうか?……野菜は不味い気がするが」野菜は嫌いだ……何種類かを覗いて………だってシャキシャキしていて気持ち悪いし………味ないし……
「ん?そうか?土佐煮なんて美味いぜ。今度作ってやろうか?」軽口を叩き、蜜は近所の御老女に裾分けされた、茄子や筍や人参や里芋の入った煮物の味を思い出していた。昔は茄子と人参と筍をいっぺんに食べるなんて考えもしなかったが、旬の有るものが一年中食べられるとは良い時代になったものだ、と腕を組んで空を仰ぐ。
「相変わらず時代に乗るもんだなぁ」最近やっとかき氷とやらが食べられるようになった輝刃にとって土佐煮とは未知の食べ物であって予想が全くつかない
「その通りだ輝刃!私は常に最先端を走っているんだ!」驚きと言う感情は、関心や怒り、また悲しみなど多種多様な感情へと変化する直前の、一瞬で消え去ってしまう儚いものだ。人の子の一生や美の様な儚さを持った驚きと言う感情は、知らない花を見た時の様な素晴らしい新鮮さを味わわせてくれる。蜜はそれを愛していた。「ところでだが…輝刃、今日はどうして此処に?」蜜は顔馴染みに問い掛ける。あまり行動の予測がつかない彼のことだ、予想外の答えが帰ってくるのだろうと期待しながら。
「なんか……えっと……」どうしてと言われてもどう答えたらいいのか分からなかった美味しそうな匂いがして……親と子の幸せそうな会話が聞こえて……自分では体験した事の無いものがどんなものかを考えていた……そんな輝刃の顔はどこか儚げだった
「…どうしたんだ輝刃、誰かにいじめられたかい?」何故だか物憂げな表情になってしまった彼はなんだからしくなくて、蜜は彼の何時もの無邪気な様子からはかけ離れた雰囲気を、何故だか不安に思った。らしくないと言うだけで迫害が理由だと考えてしまうあたり、まともそうに見える蜜も思考回路はそれなりに奇特だ。
「そういう訳では……」彼は明らかに誤魔化そうとしているさっき何があったかは予想がつかない
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